離婚の際の財産分与、家や住宅ローンはどうなる?

2019年の厚生労働省の調査によると、結婚が年間59万9,000件に対して離婚は20万9,000件。3組に1組が離婚をしている計算になります。最近では、20年以上も連れ添った夫婦が離婚する「熟年離婚」も増加しているそうです。
離婚となると気になるのは財産分与。現金は分けやすいですが、家は住宅ローンなどもあり、そのまま住むのか、売却して清算するのかなどいろいろと検討しなければなりません。今回は、離婚の際に家や住宅ローンはどうなるのか、財産分与の基礎知識と併せて解説します。

財産分与の基本的な考え方

財産分与とは、離婚をする際に、夫婦が結婚生活の中で共同で築いてきた財産を分け合う手続きです。財産分与については、離婚前に話し合いを進めてもいいですし、離婚後に請求することもできます。ただし、離婚後2年以内に行わなければならず、この期限を越えてしまうと家庭裁判所への申し立てができなくなるので注意が必要です。財産分与の種類や対象について解説します。

財産分与の種類

財産分与の種類には、大きく分けて清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3つがあります。

清算的財産分与

財産分与の言葉のイメージに最も近いのが清算的財産分与です。預貯金、マイホームなど婚姻中に二人で築いた財産を2分の1ずつに分けます。全て現金化して公平に分与できるといいのですが、家などはどちらか一方が離婚後もそのまま住み続けるケースもあり、その場合は話し合いでどのように分与するかを決めます。

扶養的財産分与

例えば、専業主婦が離婚すると、仕事が見つかるまでの間は生活が大変です。その場合、生活能力のある方が、相手の生活が安定するまでフォローをします。これを扶養的財産分与といいます。ただし、収入がある場合や、親族に頼れる人がいる場合、再婚相手がいる場合には、扶養的財産分与は適用されません。

慰謝料的財産分与

通常、慰謝料は現金で支払われますが、財産分与の場合は、金銭以外の家や土地などを慰謝料の代わりとして受け取ることができます。夫(妻)から「不倫相手と一緒になりたいので離婚したい」と言われた場合、不倫に対する慰謝料を現金で請求するのとは別に、住んでいる家を慰謝料として財産分与してもらうことも可能です。

財産分与の対象となるもの・ならないもの

財産分与の対象となるもの

預貯金や、家などの不動産、株式などの有価証券、生命保険や教育保険、家財、貴金属、絵画、骨董品など婚姻後に二人で築いた財産全てです。

財産分与の対象とならないもの

結婚前にそれぞれが所有していた財産は、特有財産と呼ばれ財産分与の対象にはなりません。また、夫婦関係が破綻して完全に別居している場合、破綻後に夫婦のどちらか一方が購入した家も財産分与の対象にはなりません。

住宅ローンの有無で異なる家の財産分与

家の財産分与の方法を、住宅ローンを完済しているケースと、ローンがまだ残っているケースに分けて解説します。

ローンを完済した家を財産分与する方法

住宅ローンを完済している場合の家の財産分与の方法は、次の2パターンです。

売却して売却代金を分割する

不動産を売却して、現金化した状態で分割します。一円単位で分けられるので最も公平でトラブルが少ない分割方法といえます。

現物で分割する

現物分割は、不動産の査定を行った上で、資産を二人が同等の割合になるように分割する方法です。例えば、不動産の査定価格が4,000万円だった場合、夫に不動産(4,000万円)を譲った妻には、有価証券(2,000万円)と預貯金(1,500万円)と車(500万円)が分与されます。
評価の方法に納得できない場合や、どちらが今の家に住み続けるのか折り合いがつかない場合など、話し合いが長引いてしまうケースもあります。

住宅ローンが残っている家を財産分与する方法

住宅ローンが残っている場合は、住宅ローンの残りが売却金額を上回るオーバーローンか、住宅ローンの残りが売却金額を下回るアンダーローンかによっても異なります。

オーバーローンの場合

住宅ローンの名義人がそのまま住む

住宅ローンの契約内容も変わらないので特に問題はありません。

住宅ローンの名義人ではない方が住む

夫婦のうち、住宅ローンの名義人でない方が住む場合、収入があり、現在の住宅ローンを借り換えできるのであれば問題ありません。しかし、専業主婦など住宅ローンが組めない場合は、扶養的財産分与や養育費代わりに夫が支払うなど、条件が複雑になるので交渉が長引くケースが多いです。

ペアローンを組んでいてどちらかが住む

夫婦の共同名義でペアローンを組んでいる場合は、基本的には引き続き住む方が住宅ローンを引き継ぐかたちになります。このため、今後も住み続ける方が単独でも同じ金額で住宅ローンを組み直すことができるかがポイントになります。大抵、二人の収入を合算した信用力でローンを組んで高い物件を購入していることが多いので、一人では与信能力が足りないと判断されるケースがほとんどです。その場合、住宅ローンが組める金額まで繰上げ返済をしたり、新たに親族などの保証人を立てるなどする条件で銀行と交渉することになりますが、最悪の場合は全額返済を求められます。そのため、オーバーローンの場合は、売却や任意売却なども検討することになるケースもあります。

アンダーローンの場合

利益価値相当の金銭を分割する

不動産がローンの残債よりも高く売れて利益が出る場合、その利益分は共有財産です。そのため、その家に引き続き住む人は、利益価値相当の金銭を分与して相手に支払う必要があります。例えば、売却価格が5,000万円で住宅ローンが4,000万円の場合は1,000万円の利益が出るため、家に住み続ける人は、出ていく人に対して2分の1の500万円を支払います。売却価格よりも住宅ローンの残債が多い場合は、お金を支払う必要はありません。いずれの場合もその後の住宅ローンは住む人が支払うのが基本です。

家を売却する方法は「仲介」と「買取」の2種類

離婚による財産分与では、住んでいた家にそのまま住むのを嫌がる夫婦が多く、ローンの組み直しなどは手続きの難易度も高いことから、実際には売却して現金化して分けるケースがほとんどです。家を売却する方法には、不動産会社に売却活動を委託して買い手を見つけてもらう「仲介」と、不動産会社に直接家を買い取ってもらう「買取」の2種類があります。

仲介のメリット・デメリット

仲介は、不動産会社と媒介契約を結んで家を売却してもらう方法です。メリットは、一般顧客に売却するので買取よりも売却価格が高くなることです。デメリットは、時間がかかることと、売却できない場合は価格を下げなければならないことです。当初予定していた金額で売却ができないこともあります。離婚まである程度時間があって少しでも高く売却したい場合は、仲介で売却するといいでしょう。仲介には複数社に任せる一般媒介と、一社に任せる専任媒介とがあります。専任媒介の方が不動産会社も力を入れるので売却までがスムーズです。

買取のメリット・デメリット

買取は、家を不動産業者に直接購入してもらう方法です。メリットは、査定金額=買取価格となること。金額に納得できれば即売却することができます。デメリットは、仲介で売却するよりも2~3割安くなってしまうことです。不動産会社はできるだけ安く購入した物件にリフォームや修繕などを行って販売し、利益を得るのが目的のためです。

住宅ローンの残債が少なく、少々安い査定額でも売却してもいいという場合は、すぐに現金化できる買取がおすすめです。

財産分与をする際、損しないために知っておくべきこと

財産分与を行うにあたって、注意すべきポイントは次の3点です。

財産分与の請求には期限がある

財産分与は、離婚後2年を越えると請求することができなくなります。離婚の際は速やかに財産分与の請求を行いましょう。

離婚協議書は公正証書にする

離婚後に、相手方から養育費を払ってもらえないケースは多いです。きちんと支払ってもらうために、養育費や財産分与など離婚に関する取り決めを公正証書にするという方法があります。公正証書は、公文書として高い信用力があり、裁判の証拠にもなります。未払いなどのトラブルがあった場合に役立ちます。

連帯保証人の責任は継続する

オーバーローンで家を売却できずにどちらかが住み続ける場合、購入時に一方が連帯保証人になっているとそのまま責任が継続するので注意が必要です。家を出た場合でも、万が一相手の住宅ローンの支払いが滞ると自分が代わりに返済しなければなりません。基本的には連帯保証人を解除することはできないため、契約者に単独で新たなローンを借り換えてもらうか、代わりの連帯保証人を立てるなどしてローンを組んでいる金融機関と交渉するのがいいでしょう。

離婚前にしっかりと話し合うことが大切

離婚による財産分与では、家やローンの取扱いが問題となることが多いです。すべて現金化して2分の1ずつ均等に分ける方法がトラブルも少ないですが、オーバーローンの場合はすぐには売却ができないため離婚協議が長引くこともあります。家を売却して財産分与する場合は、時間がかかる仲介よりもすぐに売却できる買取がおすすめです。今回の内容も参考に、離婚後にトラブルにならないように、事前によく話し合いをしてください。

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