農地を相続したが、いらないので処分したい。どうすればいい?

農地を相続したが、いらないので処分したい。どうすればいい?

農地を相続したが、農業をする気はないので処分したいという場合、どうすればいいでしょうか?農地の売却は、宅地と違って少々複雑です。農地を相続するにあたっては、農業委員会への届け出が必要です。権利の移転や他の用途に転用する場合にも複雑な手続きをしなければなりません。相続しない場合は、相続放棄や売却といった方法があります。今回は、農地を相続する際の対応について解説します。

農地を相続放棄することはできる?

結論から言うと、農地を相続放棄することは可能です。農地を相続した場合の手段には、相続放棄以外に売却、他の用途に利用する、そのまま放置しておくといったものがあります。
しかし、通常の不動産と違って農地の場合は簡単に売却や他の用途に利用することは困難です。農地は宅地とは違い、国の政策上保護する必要があるため、法律によって厳しく制限されています。農地として耕作目的でしか利用できず、売却するときにも農業委員会の許可を取る必要があります。つまり、農家以外の人が相続しても簡単に売却できないという訳です。
他の用途に利用する場合でも、農業委員会の許可が必要です。市街化区域の「第2種農地」や「第3種農地」であれば宅地に転用することも可能ですが、それ以外の農地は基本的に転用ができません。それなら相続放棄をして農地を相続しなければいいのではないかと思うのですが、相続放棄をするにも手間がかかります。
相続放棄をする場合は、現金や不動産、証券などのプラスになる財産、また借金など負の財産、どちらも全て放棄しなければなりません。つまり、農地だけを選んで相続放棄するということはできないのです。仮に相続放棄をするにしても、相続人には農地の管理義務があり、次の相続人か管理者が決まるまで管理し続ける必要があります。

農地を相続放棄したあとの管理義務はどう対処する?

農地の取り扱いの難しさを知ると、プラスの財産があっても多少であれば相続放棄したいという人もいるでしょう。農地を相続放棄したあとの管理義務の対応は、相続放棄後に次の相続人がいる場合といない場合、2つのパターンに分かれます。

相続放棄後に相続人がいる場合

相続人が誰になるかの確認が必要です。相続には順位があり、相続人が相続放棄をすると、次の順位相続人に権利が移ります。配偶者は常に相続人となり、それ以降の順位は第1順位が子供や孫などの直系卑属、第2順位が父や母などの直系尊属、第3順位が兄弟姉妹となります。相続を放棄した人は、放棄をしても、次の相続人が農地を管理できる状態になるまで管理義務を負います。

相続放棄後に相続人がいない場合

管理人を探すことになります。もし管理人が決まらなければ、最終的には国庫に帰属することになります。全ての相続人が相続放棄する、他に身よりがないといった場合は、最後に相続放棄をした人が農地を管理します。一定期間を経ても次の管理人が見つからない場合、国庫に帰属することになりますが、通常手続きに1年以上かかります。手続きが完了するまでは、最後の相続人が相続財産管理人として諸経費を支払う必要があります。

相続放棄をする場合の手続きと注意点

次は、農地を含めて実際に全て相続放棄をする場合はどういった流れになるかを解説します。
具体的には、「相続放棄申述書を書く」、「必要な書類を準備して家庭裁判所に申立てする」、「家庭裁判所が受理通知書を発送する」、「受理通知書を家庭裁判所に返送する」という流れになります。

1.相続放棄申述書を書く

相続放棄申述書は、直接家庭裁判所に行くか、裁判所のホームページでダウンロードすることができます。相続放棄は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内(熟慮期間)に家庭裁判所へ申述が必要です。
相続放棄申述書は、20歳未満と20歳以上で異なります。用紙を間違えると余計な時間がかかってしまうので、作成時には自分の年齢にあった用紙かどうかをきちんと確認しましょう。

2.必要な書類を準備して家庭裁判所に申立てする

家庭裁判所に申立てをするには、相続放棄申述書以外にも必要な書類があります。順位に関係なく共通する書類は、被相続人の住民票、申述人の戸籍謄本、収入印紙、切手などです。その他、それぞれの順位に応じて関係者の戸籍謄本が必要ですので、家庭裁判所や裁判所のホームページで確認して準備しましょう。
書類がそろったら、家庭裁判所に相続放棄の申立て手続きを行います。自分で手続きするのが面倒な人は、費用は発生しますが弁護士や司法書士などに依頼するのもいいでしょう。

3.家庭裁判所が受理通知書を発送する

家庭裁判所は、申立てを受理した後、相続放棄の申述の内容について間違いがないか、また状況確認のための照会書を申立人に送付します。発送までの期間は申立て受理から半月程度です。

4.受理通知書を家庭裁判所に返送する

申立人は照会書の内容を確認し、相続放棄を進める場合は照会書に必要事項を記入して家庭裁判所に返送します。家庭裁判所は、照会書を受理した後に申立人に「相続放棄申述受理通知書」を送ります。この書類が手元に到着した時点で、相続放棄の手続きは完了です。

相続放棄せずに農地を売却するには?

相続放棄をせずに相続した農地を売却するには、農地のまま農家に売却する方法と、用途変更して売却する方法の2種類があります。

農地のまま農家に売却する

相続した農地を、近隣の農家に売却できれば、問題も少なく手続きもスムーズです。しかし、実際にはどこの農家も後継者不足で、新たに農地を増やそうと考えている農家は多くありません。
また、農家と言ってもどんな農家でもいいわけではなく、専業の農業従事者である、農業に従事している人材や機械を所有している、50ヘクタール以上の耕作面積がある、全ての農地を耕作しているといった条件をクリアしていなければ、農地を購入することができません。農地のまま売却しようとしても、現実的には買手を探すのは困難です。

用途を変更して売却する

農地の売却において現実的なのは、用途を変更して売却する方法です。農地を相続する、農家を廃業するといった場合に、宅地や駐車場、店舗などへの転用が認められるケースがあります。
農地は立地に応じて、農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地の5種類がありますが、このうち農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地は基本的に他の用途には転用できません。第2種農地、第3種農地の転用に当たっては、立地基準と一般基準をクリアすることが必須です。

立地基準

第2種農地と第3種農地で異なります。第2種農地は、農地として生産性が低い、市街地として発展する可能性がある、駅や官公庁から500m以内などの条件をクリアしている場合に転用が認められるケースがあります。
第3種農地は、市街地にある農地で用途地域内にある、駅や官公庁から300m以内にあるといった条件で転用が認められることがあります。最も転用が認められやすい農地です。

一般基準

転用する事業が申請通り行われるか、転用後の事業を不備なく運営できる資金・計画性があるか、周辺の農地に影響を与えないかの3つをクリアする必要があります。相続した農地が立地基準と一般基準をクリアしていれば、宅地に転用して売却できる可能性は高いです。
農地のまま売却するにせよ、他の用途に変更して売却するにせよ、農地の売却には手間がかかります。とにかく早く処分したい、現金化して手放したいといったときは、農地専門の買取会社に依頼するのも一つの方法です。どんな買取会社でも農地を買い取ってくれるわけではないため、必ず農地専門の会社かどうか確認した上で依頼するようにしましょう。

農地の相続はかなり大変!

農地は、売却する、相続を放棄する、いずれにしても手間がかかるので対応が大変です。相続を放棄する場合でも全ての財産を放棄する必要があり、次の相続人や管理人が決まるまで、最後に相続放棄した人が管理義務を負わなければなりません。売却したくても、市街地に近い農地でなければ転用はなかなか認められません。
どうしても対応が難しい場合は、専門の不動産会社による買取も視野に入れるといいでしょう。それぞれの農地の状況に応じて、ベストな選択をじっくり検討しましょう。

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